皆さんも不動産競売というのをご存じと思います。
よくあるのが抵当権を設定して銀行からお金を借りたけれど、返済ができない
ときに銀行が競売にかけます。
不動産競売の詳しいことはさておき。
競売では裁判所にファイルがあって、紙の資料が綴じられています。
これは誰でも見ることができます。問題は、中を見ることができないことです。
紙の資料と外から見て買うか買わないか、買うとしていくらにするかきめて、
「入札」します。
このとき、紙の資料にも「空き家」とあり、外から見ても住んでいる気配はありません。
入札によって購入することになれば、代金を支払って自分の名義にします。
それからいよいよ中に入ります。
この空き家に最初にはいるときは、いつも嫌なものです。
ひょっとして何かおいてあるのでは?万が一にも死体があったりして?とか、
思わず考えてしまいます。
この建物にいよいよ入りました。日中ですが、カーテンは閉め切っていますから、
中は薄暗いわけです。
入り口に近い方から順に点検します。「トイレ、OK。台所、OK。入り口そばの一つ
目の部屋、少しゴミはあるが、まあOK。押入、勇気を出して開ける、ゴミ少々。」
このように順次、確認していきます。そして、奥の和室の襖を少し開けたところ
布団が敷かれています。しかも何となく膨らんでいるように見えました。
ぞっとしました。生きた人間が寝ているにしろ、家族が死んでいるにしろです。
誰か呼びに行こうかとも思いましたが、根性無しと言われそうで、思い切って
襖を開けました。
結論はただ布団があるだけで、生きた人間も死体もありません。
後で聞いたら住んでいた息子が布団敷きっぱなしで、出ていったとのこと。
カーテンや障子、そして窓を全部開けて思わず深呼吸しました。
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