[戻る]

11.アパートと幽霊 

 幽霊がいるのかどうか。私は、信じない方ですが、人並みに怖いとも思います。

 古い(昭和40年に建てられた)アパートの入居者が退去したので、大家さんの
依頼で内装工事を発注しました。内装屋さんは40歳の頑強な人で、古くからの
つきあいです。

 その内装屋さんが真っ青な顔をして、私のところへ来ました。
「あのアパートは何かいる」

 いつも通り、古い壁に下地処理をしていたところ、急に背中がぞくぞくしてきたそうです。
初夏の昼下がりで、作業をすれば汗ばむほどの気温なのに。
そのゾクゾクは、作業中ずっと続いたそうです。

 「これは何かがいる」
そう思いながらの作業で、何とかやり終えたとのことでした。

 念のため、近所にそのアパートの住人(過去に住んだ人)のことを聞いてみました。
そうすると、何代か前のアパートの住人が、海に釣りに行って事故に遭い死亡した
という話に出会いました。

 私は信じない方です。
しかし、そのようなアパートを仲介して入居いただくか否かは、営業道徳上の問題です。
つまり、「住人が海の事故で死んだらしい。内装屋さんが何かいると訴えた。」アパートを
何事もなく入居募集できるかということです。

 私どもの経営理念・営業理念は、良いことも悪いことも全て情報を提供し、契約希望者の
理解と納得の上で契約する、です。
 広告でこのようなことを書けるか、というとできないわけで、営業しないことに決定しました。
大家さんにも理解を得て、この部屋は現在閉鎖しています。

 幽霊がいるから閉鎖したのではありません。
「住人が海の事故で死んだらしい。内装屋さんが何かいると訴えた。」アパートだから、
広告活動ができないため、結果的に入居募集が不可能と考え、閉鎖したのです。



BACK不動産よもやま話NEXT





ご意見ご感想は daiti@jeans.ocn.ne.jp までよろしくお願いします。