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28.アパートのカビと修繕

 私たち宅地建物取引業者は、貸家やアパートの紹介業務も行います。典型は、大家さんから「今度部屋が空くから宜しく」と頼まれ、入居者を募集するというものです。入居希望者が決まると、所定の手続きをします。契約書を作ったり、鍵を渡したり、お金を預かったりです。

 さて、入居中のトラブルについてはこれまでもお話しした通り、私共は大家さんと入居者の間に入って、「社会常識に添った助言と手助け」をいたします。

 ところで、入居募集や契約手続きについて、法律は「これをやるように。こんなことはしないように」と決めています。それでは、入居中のトラブルについてはどうか、というと「助言や手助けをしなさい」とは明確に書いていません。
 それでも、多数の宅地建物取引業者は「助言と手助け」をしていると思います。そして、手助けをしても、報酬や手数料を受領しないことが多いと思います。

 さらに、「次の部屋に移るから、退去します」というときも、「助言と手助け」をしています。私はこの業務を「退去時清算事務」と呼んでいますが、敷金の清算返戻が中心になります。この退去時清算事務も、多くの場合は報酬や手数料を受領していません。

 入居中のトラブル対処と退去時清算事務は、法律に明確に「こうしなさい。」と書いておりません。そのため、業者さんによっては考え方に差異があります。私は、「大家さんと入居者の間に立つこと」と「社会常識に添った助言と手助けをすること」を基本方針としています。しかし、全ての宅地建物取引業者さんが同じ方針に立っている、とは言えない状況です。どちらかというと大家さん側に助力する方が多いかもしれません。

 需要と供給という市場があり、需用者と供給者の中に立つ仕事は世の中にたくさんあります。証券業界・卸売市場などが典型です。「中に立つ」仕事にもかかわらず、特定の当事者(たとえば大家さん)に助力する考えだと「市場」の公平性や信頼性(透明性)がなくなる、と考えています。自分達の利益だけを考えているとやがて市場の信頼性が崩れ、需要者から見放されます。結局、自分たちの仕事場を失うことにつながります。ちょうど、証券業界で不祥事が続き、小口の個人投資家が株式市場から去ったのと同じです。

 前置きが長くなりました。標題について少しお話しします。
今のアパートに入居してから5年経つ方が、退去することになりました。木造2階建てのアパートで、1階の部屋でした。間取りは2DKです。部屋の一つは道路に面する和室です。

 さて、退去した方と内部を確認したところ、この和室の壁に黒いカビが発生しています。道路側の壁の下の方です。角の部分がかなり大きいのですが、あくまで「下」の方で、全面というわけではありません。しかし、黒いもんですから、かなり汚れとしては目立ちます。

 前置きが長いせいで話は次回に続けます。



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