[戻る]



31.アパートのカビと修繕−4

  アパートの和室の壁に黒いカビが発生していたお話しの続きです。

 入居者と大家さんの言い分はそれぞれ「正しい」のです。間違いはありません。
もちろん、法律とか裁判の話ではありません。社会常識として、見当違いのことは言っていないという意味です。

 しかし、このままでは退去清算事務が終了しません。
そこで、社会常識つまり「世間一般」にたって、入居者と大家さんに助言することになります。法律上はともかく、です。

 木造アパートの一階が、他の階やコンクリート住宅などに比べ湿気が上がりやすいのは、確かなのだと思います。木造住宅一般に言えるかもしれません。あくまで、世間一般にこのように思われているのではないか、という意味で、科学的な根拠をもっているわけでありません。

 となると、湿気が上がりやすい部屋の換気と湿度対策を、入居者が「できる範囲で行っていたかどうか」が、「助言」のポイントになります。

 窓を開けて換気するといっても、不在時には防犯上不可能です。就寝中も同じです。「窓」をあけなかったことだけで、「入居者の換気の仕方が悪い」と言うわけにはいかないでしょう。

 だからといって、換気しなくて良いわけではありません。
どのようにしていれば「できる範囲」の換気をしたと世間一般に思うでしょうか。これは、建物設備や家族構成により変わるように思います。洗濯物の乾し方や炊事のとき、暖房の種類にもよると思います。それこそ一概に言えません。

 入居者が「できる範囲のことをやっていなかったなぁ」と気づけば、ある程度の修繕費用の負担を納得します。大家さんが「できる範囲の換気はしてくれたんだなぁ」と気づけば、修繕費を入居者に求めることは止めるでしょう。

 2センチメートルほど壁から離した家具は、5年間一度も移動していません。これも、家具の種類や大きさ重さにより変わるかもしれません。世間の常識はどうなんでしょう。

 お気づきと思いますが、つまるところ「社会常識」「世間一般」というのは、大家さんと入居者の心の中にあるものです。私が「これが社会常識だ」ということはできません。あくまで、「助言」のなかで大家さんと入居者の心の中にある「一般常識」に働きかけて、気づいてもらうよう努力します。これが「手助け」です。

 ですから、あくまで「法律上はともかく」なのです。

 今回の件では、必要な修繕費の一部を退去した方に負担戴くことで、借主と貸主の了解をもらい処理されました。



BACK不動産よもやま話NEXT





ご意見ご感想は daiti@jeans.ocn.ne.jp までよろしくお願いします。