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29.車庫から染み出す水−3

  コンクリートたたきの下に地下水の流路を遮る地質があるため、車庫の片隅から水が真上に浸み出してきます。

 遮るものを取り除けば、と考えました。しかし、これは大変な工事になるようです。コンクリートタタキを壊し、道路まで排水設備を設置することは理論上可能ですが、コンクリート擁壁も壊さなければなりません。しかも、コンクリート擁壁は車庫の基礎を兼ねていますから、柱や壁も一旦取り除く必要があります。

 そこで、地下水の圧力が大きくならないよう、流れ込む地下水量を減少させることを検討することにしました。

 まず、地下水流の推定のため付近の地形や地質の観察と調査を始めました。まず大きな把握をします。
 ついで隣接住宅地の排水状況や流路の調査、特に屋根の雨水の行方を調査しました。そして、依頼者の住宅地の調査です。床下の地面も含め次第に範囲を狭めて調査します。

 広い範囲から調査して、車庫の特定箇所までの地下水の流れを推測し、図にまとめます。
その上で、この流れを変える方法を検討し、その工法を計画します。
見積もりを立てて、依頼者と協議の上で工事を実施しました。

 「地下水の流れ」が推測と違っていれば、どんな工事をしても水の浸み出しは止まりません。
幸い工事は効果を上げ、5年以上たっていますが水の染み出しは減少したそうです。
しかし、大雨が降り続くと、多少の浸み出しは出るといいます。

 付近に高低差がある場合、あるいは自分の宅地内でも段差をもうける場合は、地下水脈にも考慮して施工するようにした方がよいでしょう。
 地下水脈から水が上に染み出すおそれがある場合は、施工段階で排水の考慮をしておけば、費用は格段に安く済みます。

 古い町並みで間口が狭く奥行きが長い地域で、隣接地の境界に側溝があるのを見かけることがあります。周りに高低差があるわけではないのですが、ちょろちょろと水が流れています。
 先人の知恵と思います。隣接同士協力して水の流れを作り、住宅や敷地に水が染み出すことを防止したのでしょう。
 安易に小さな側溝を埋めてフェンスやブロック塀を境界に設置すると、思わぬ所から水が浸み出すかもしれません。



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